開発途上国の貧困問題
なぜ世界には、豊かな国と貧しい国があるのだろう。疑問を持たれている方も多いと思います。貧しい国のほとんどは「開発途上国」と呼ばれています。開発途上国が貧困の状態に置かれている理由を解説しましょう。
貧困問題が発生している国
この地球上に国がいくつあって、その中で開発途上国と呼ばれる国はいくつあるのか、ご存知でしょうか。
日本政府が承認している国は全部で195カ国です。日本を加えると、世界には196カ国が存在しているということになります(注1)。そのうち開発途上国と呼ばれている国は140カ国以上あります。驚くことに、地球上の7割以上の国が開発途上国なのです。
- 開発途上国で生活する親子
開発途上国とは、経済開発協力機構(OECD)が作成している「ODA(政府開発援助)受け取り国リスト」(注2)に掲載されている国を指しています。このリストに載るということは、日本を含むOECD加盟国から援助を受けている開発途上国である、ということになります。ODA受け取り国リストは調査年ごとに変動があり、だいたい143カ国から145カ国が開発途上国として掲載されています。
開発途上国の中でも特に開発の遅れた47カ国は「後発開発途上国」とされ(注3)、その殆どが世界銀行によって「低所得国」に分類されています。これらの国は長い間、貧困に苦しんでいるのです。
後発開発途上国の内訳は、アフリカ<の国々が最も多くて33カ国。次いでアジア9カ国、大洋州4カ国、中南米1カ国と続きます。アフリカの貧しい国は、サハラ砂漠より南に集中しているのがわかります。
後発開発途上国 (2017年6月発表) |
アフリカ |
アンゴラ,ベナン,ブルキナファソ,ブルンジ,中央アフリカ,チャド、コモロ,コンゴ民主共和国,ジブチ,エリトリア,エチオピア, ガンビア,ギニア,ギニアビサウ,レソト,リベリア,マダガスカル,マラウイ,マリ,モーリタニア,モザンビーク,ニジェール,ルワンダ,サントメ・プリンシペ,セネガル,シエラレオネ,ソマリア,南スーダン,スーダン,トーゴ,ウガンダ,タンザニア,ザンビア
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アジア |
アフガニスタン,バングラデシュ,ブータン,カンボジア,ラオス,ミャンマー,ネパール,イエメン,東ティモール
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大洋州 |
キリバス,ソロモン諸島,ツバル,バヌアツ |
中南米 |
ハイチ |
外務省HP「3 現在のLDC(2017年6月に発表されたもの)」より
貧困の理由と現状
貧困の理由として真っ先に考えられるのは、収入が少ないといった経済的なものです。教育を受けていないので仕事を選ぶことができない、災害や紛争などで収入の道がなくなった、農地や家畜がない、援助してくれる親族がいない、などが理由としてあげられます。
貧困を経済的な側面から測る指標として有名なのは、世界銀行の「国際貧困ライン」です。2015年10月、世界銀行は国際貧困ラインを1日1.9ドルと改訂しました(注4)。日本円に換算すると1日約210円以下(2020年2月時点)で生活している人たちが「貧困状態にある」ということになります。
2015年に世界銀行が発表したデータでは、7億3600万人が1日1.9ドル未満で暮らしていることがわかりました。その多くは、後発開発途上国に住んでいる人々です。
貧困は経済的側面だけではなく、環境・教育・医療など様々な要因が重なって発生していることが明らかになっています。国連開発計画(UNDP)は、ひとつの国の開発レベルを経済的側面だけで測るのではなく、別の指標も必要と考えて「人間開発指数」を作成しました(注5)。
人間開発指数とは、人間開発の3つの側面である「保健・教育・所得」について、その国の平均達成度を測る指標です。2018年に発表されたデータによると、人間開発指数が一番高い国はノルウェーで、一番低い国はニジェールという結果でした。上位は欧米諸国が占めています。非欧米諸国では香港が一番高くて4位、次は日本で19位という結果でした。人間開発指数の下位は後発開発途上国が占めています(注6)。
- アフリカの貧困状態にある子どもたち
最近では人間開発指数に加えて「多次元貧困指数」という指標も加わりました(注7)。開発途上国の貧困の程度と発生頻度を多次元でとらえた指標です。世帯ごとに調査が行われ、点数化されます。この指標でも、後発開発途上国の貧困程度が深刻であるという結果になりました。多次元貧困指数で貧困の度合いが高いとされるのは次のような世帯です。
多次元貧困の具体的な指標 |
1 |
就学経験年数が6年以上の世帯員がいない |
2 |
学校に通うべき年齢の子供が就学していない |
3 |
調査日までの過去5年間のうちに子供が亡くなった |
4 |
栄養不足の成人又は子供がいる |
5 |
電気の供給を受けていない |
6 |
改善された下水設備がない、又は、改善された下水設備を他の世帯と共用している |
7 |
安全な水が得られない、又は安全な水を入手するのに往復30分以上かかる |
8 |
家の床が泥、砂又は糞である |
9 |
糞、木材又は木炭で料理をする |
10 |
ラジオ、テレビ、電話、自転車、二輪車、冷蔵庫、自動車、トラックのいずれも持っていない |
内閣府HP 図表2-10 国連開発計画「多次元貧困指数」を構成する項目一覧 より抜粋
貧困を測るために様々な指標がありますが、今回はその一部をご紹介しました。これらの指標で明らかになったのは、後発開発途上国の深刻な貧困です。特にアフリカ大陸のサハラ砂漠より南にある国々は極度の貧困状態にある人がとても多く、経済的にも人間開発的にも貧しい状態にあるという現状が浮き彫りとなっています。