国際NGOへの就職を考えるあなたへ:支援の現場を支えるスタッフから
海外駐在、開発事業担当、緊急人道支援事業担当の3人が、NGOへの就職・転職を検討するあなたに、それぞれのエピソードや思いなどご紹介します
大学時代にはじめて訪れた「途上国」、それが今から14年前のカンボジアでした。タイ国境から陸路でシェムリアップへ入ると、タイとは明らかに違う雰囲気に戸惑ったのを覚えています。車窓からは地雷の存在を示す標識がいくつも見え、道端には手足のない方々や物乞いをする子どもたちがたくさんいました。今でもあの頃見た景色は鮮明に覚えています。
それから大学時代は休みのたびごとにバックパッカーとして世界中を旅し、大学最後の旅としてインドのコルカタにあるマザーハウスでボランティア活動をし、障がいを抱えた子どもや、親に捨てられた子どもと接する機会を得ました。
大学卒業後は、海外とつながり、途上国でのビジネスもできるような仕事がしたいという気持ちからグローバル企業へ入社しました。しかし、働く中で、マザーハウスで出会ったような、世界の片隅でまるで社会から忘れ去られたように生活せざるを得ない子どもたちや、ビジネスではなかなかリーチしづらいところに暮らす人たちのために働きたいという気持ちが強くなり退職を決意、青年海外協力隊員として南米のボリビアに赴任することにしました。
今年(2017年)の2月末から、外務省の助成金を受けて行う「タケオ州にお
ける母子健康改善事業」とチャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラム(ADP)の事業管理のため、カンボジアのプノンペンに拠点をおいて駐在勤務をはじめました。
はじめて訪れた14年前とは大きく様変わりした街・国の様子に驚いています。プノンペンの街で暮らす分にはほとんど生活に困ることはないように感じていますが、車で数時間走って事業地に入ると様子は一変します。
事業地で働く現地スタッフは、平日は単身ADPオフィスで寝泊りし、週末になると家族の待つ家へ帰るという生活スタイルをとっていることが多いのですが、オフィスでも頻繁に停電するため、暑さ対策や蚊対策に苦労しています。
お風呂はもちろん水シャワーですね。事業地の中には雨期の間、約5-6か月は完全に水に浸かってしまう地域もあり、舟で移動しなければなりません。これから僕も月の3分の1は事業地で生活し、彼らと苦労を共にしながら事業管理を行います。
インフラが十分整っているとは言えない農村で暮らす母親や子どもたちが、毎日健康に暮らせるように、現地スタッフや保健センター等と協力しつつ事業の成功を目指します。
ぜひ実際に途上国の現場を訪れて、自分の目で現実を見て欲しいです。今は僕が大学生だった頃と比較しても格段に世界のいろいろなところへ行きやすい時代になったなあと感じています。
百聞は一見にしかず、ぜひ自分の目で確かめ、心で感じたことをモチベーションにして欲しいなと思っています。
NGOだけでなく、国際協力の世界では自身の専門性を持つ重要性はよく知られています。僕も、自分の中での判断基準やベースとなるという点で専門性は大事であると思います。一方で、事業管理を行ううえではさまざまな視点が必要になります。
事業管理の方法だけでなく、事業の持続性を考えたファンドレイズや、スタッフの育成などなど...僕自身も前職でのマーケティング経験が役立っていると感じているので、とくに若いうちは選り好みせず、何でも関心をもってやってみる、というような姿勢も大切なのではないかと思っています。
また、コミュニケーション力の大切さも実感しています。特に意識しているのは、相手の置かれている状況をよく理解したうえで自分自身の考えを相手に伝わるよう明確に伝えること。自分の言いたいことだけを伝えるのではだめだと思っていて、相手といかに信頼関係を築けるか、ということを大切にしています。
国際協力、とくにNGOでの働きを考えている人にとっては、経済的な事柄も重要な検討事項だと思います。
僕自身はWVJ入団直後に結婚し、まもなく子どもにも恵まれました。自分ひとりの収入で家族を養うことに困難を覚える時期もありましたが、奥さんの理解・助けがあってやってこられました。
東日本大震災復興支援担当として2013年1月に入団しました。復興支援事業の区切りを迎えてからは、後継事業である福島県内の子ども支援の事業管理と、主に南アジア地域の開発事業管理双方に携わっています。開発事業についてはワールド・ビジョン(WV)がチャイルド・スポンサーシップによって実施している地域開発プログラム(ADP)と、助成金・寄付金等で実施している開発事業の二種類があり、国内外あわせて約5事業を担当しています。
直接のきっかけは、東日本大震災です。震災発生当時、私は夫の仕事に同行してアメリカに住んでいたため、今は何もできないけれど帰国後には是非とも復興支援の仕事がしたいと考えるようになりました。できればこれまでの業務経験を活かして復興支援に携わりたい、またこの先の仕事人生において、自分が共感できるブレないビジョン、ミッションを持っている団体で働きたいとも強く思っていました。その中で、もともと国際NGOとして存在を知っていたWVJで人材募集をしていることを知り、応募しました。
大学院で開発経済学を学んだあと、国内の地方自治体等の行政経営やまちづくりに関するコンサルタントとして5年間働きました。その後、JICAでバングラデシュ、スリランカのインフラ系円借款案件形成に携わりました。国内と海外の両方でまちづくり/地域開発に取り組んだことは、結果的に今の仕事に深くつながっています。入団当初担当していた東日本大震災復興支援事業でも、現在担当している福島県内での子ども支援事業でも、WVJの国際NGOとしての強みを活かしながら現場に根ざした活動を行うことが求められるため、国際NGOとしての視点と、日本の市民団体としての視点の双方を常に意識する必要があります。これについては、自分のこれまでのバックグラウンドに助けられて、あまり苦労せずにできているように思います。
この仕事をしていて、心が揺さぶられない日はありません。そこで生まれる「思い」が、仕事の原動力です。ただ、「思い」だけでは物事は進まないし、自己満足に終わってしまうので、常に冷静さをもって、なすべきことは何か、それはどうすれば実現するのかを考え、行動する、言語化・視覚化して人に伝えることを心がけています。厳しい環境に置かれた子どもたちにぐっと寄り添う気持ちと、視野を広く持って客観的になること、その2つのバランスをいつも大切にしています。
NGOで働きたいと思う人向けのメッセージとしては適していないかもしれませんが、「NGOは特別な仕事じゃない」と言いたいです。
私は、友人・知人から「すごい仕事だね」だとか、「立派な仕事」とか言われるたびに、そんなことないよ!といつも思っています。NGOは「社会貢献の仕事」というけれど、社会に貢献しているのはむしろ、私たちNGOの活動を支援してくださっている方々のほう。NGOスタッフの役割はたくさんの人の気持ちの橋渡しをすることだと思っています。私のイメージでは、WVJはスーパーマンの集まりではなくて、小さな一人ひとりが、それぞれの良いところを最大限発揮し(そして苦手なところは補い合いながら)、WVJの活動に共感し、応援してくださっている本当にたくさんの方々と一緒になって、少しずつ社会を良い方に変えていくような仕事だと思っています。
だから、熱い想いを持った小さな一人の仲間をいつでも歓迎しています。
緊急人道支援課(HEA課)に所属し、主にジャパン・プラットフォーム(JPF)からの助成を受けて実施しているヨルダンで生活しているシリア難民とヨルダン人の子どもたちへの教育支援事業、シリア難民の越冬支援事業を担当しています。現在実施している事業のモニタリング、予算管理、報告書作成、新規事業の申請書作成等をヨルダンオフィスのスタッフ(現地駐在日本人スタッフや国際スタッフ、ローカルスタッフ)と連携しながら行っています。
想像以上にデスクワークが多かったです(笑)緊急支援事業を担当しているので、開発援助事業と比較すると事業期間が短いため、必然的に申請書作成~報告書作成までのスパンも短く、書類と対峙している時間が多いです。ドナーの求める要求に見合うクオリティ以上のものを仕上げることが求められているので、すばやく業務の優先順位付けを行い、効率よくマルチタスクをこなせるようにするのが今の目標です。
約4年間の民間企業勤務、その後の大学院留学を経てWVJに入団しました。まずNGOを希望した理由は、現場、とくに裨益者に近いところで働きたいと考えていたからです。その中からWVJを選んだ理由は、HEA課として緊急下の教育に注力しているというところで自身の関心と合致したこと、また事業自体も単発的なものではなく、レジリエンスを高めることを目的にしているというところで魅力に感じました。
前職は規模の大きな組織だったので、一口に民間といっても差があるとは思いますが、比較すると人的・資金的なリソースが限定されているということを感じます。
その中でも、限られたリソースをどう有効に活用するかという視点を全スタッフが共有しており、一人ひとりのコミットメントが本当に高いと感じています。
生活面で言うと、今は比較的オフィスに近いところでひとり暮らしをしています。金銭的な点は民間企業時代の方が恵まれていましたが、今も特に不足を感じることはないですね。やりたいと思っていたことができていて、自分自身の「何のために働くのか」といった目的をはっきりさせた中で働けていると感じています。
WVは国際NGOなので、日々海外のWVオフィスとのやりとりが発生します。その分、システムが複雑であったりすることは否めませんが、WVパートナーシップの中にはさまざまな分野の専門家が在職しており、事業の知見も豊富にあるため、日々学びながら働けています。子ども支援、現場に近いところで働きたいと考えている方には特におすすめできる環境だと思います。