【故郷を追われた子どもたちや人々】希望の種をまく難民・国内避難民支援
ウクライナ:紛争の激化から1年、高まる精神的ケアの必要性

(2023.06.19)

ウクライナって、どんな国?

西ヨーロッパとロシアの間に位置し、かつて旧ソ連の一部だったウクライナは1991年のソ連崩壊により独立しました。人口の80%はウクライナ人で、ほかにロシア人やベラルーシ人なども暮らす多民族国家です。水資源、肥沃な土地に恵まれ、農業が盛んです。エネルギー資源や鉱物資源も豊富なため、重工業も発達しています。首都キーウは「芸術の都」とも呼ばれ、世界遺産に登録されている建築物や、「ウクライナ国立バレエ」の本拠地としても有名です。

旧ソ連時代にはロシアに次ぐ大国で、ロシアと親密な関係がありました。独立後は新ロシア派と新欧米派が対立。2000年以降、欧米に接近するウクライナに対するロシアの干渉が強まっていきました。2014年、ロシアは住民投票を経てクリミア半島を編入しましたが、ウクライナ政府はこれをロシアの武力による違法占拠とし強く反発する立場を発表しました。その後、東部でも情勢が不安定化し、ウクライナ政府軍と武装勢力の戦闘が始まりました。2021年ウクライナ国境付近でのロシア軍増強への懸念が高まっていましたが、2022年2月にさらに状況が緊迫化し、「ウクライナ危機」と呼ばれる紛争が激化してしまいました。

ウクライナの位置
ウクライナの位置

子どもたちはどんな問題に直面しているの?

ウクライナで暮らす750万人の子どもたちが、命や健康が危険にさらされるなどの影響を受け、約500万人の子どもたちが住まいを追われ、ウクライナの国内外で先の見えない避難生活を送っています。ウクライナでは、毎日54人近くの民間人が死亡または負傷しており、1,700万人以上が緊急人道支援を必要としています。530万人の子どもたちの教育が中断され、そのうち360万人の子どもたちは、紛争が悪化し続ける中、学校閉鎖の影響を受けています。

集団での避難生活、食料不足や偏った栄養バランスなどが原因で、体調を崩してしまう子どもも少なくありません。衛生的かつ安全な環境を整備し、子どもたちを病気や栄養不良から守る支援が必要です。さらに、暴力や死を目撃するなど紛争の恐怖にさらされた子どもたちはメンタルヘルスの問題を抱えるリスクに直面しています。メンタルヘルスの問題は子どもたちに深刻かつ長期的な影響をおよぼす恐れがあり、子どもたちの心のケアは最優先課題です。



ウクライナでこんな支援を行っています

ワールド・ビジョンは、ウクライナ危機発生直後から隣国ルーマニアを拠点に緊急人道支援を開始し、モルドバ、ジョージア、ウクライナ国内で国際的人道支援パートナーと連携し、食料や衣服、衛生用品など救援物資の提供をはじめ、現金またはバウチャーによる生活支援を実施してきました。現在はウクライナ国内やモルドバにも拠点事務所を開設し、支援開始時から2023年5月末までの間に、ウクライナ国内で74万人、そしてルーマニア、モルドバ、ジョージアで40万人に支援を届けました。攻撃の厳しいウクライナ東部・南部では緊急支援を加速させるとともに、ウクライナのその他の地域や周辺国においては、引き続き現金給付や、精神的ケアを必要としている子どもたちのために、「チャイルド・フレンドリー・スペース(CFS)」などを通じた心理社会的サポート、オンラインでの学習支援、語学学習のサポートなど教育支援も実施しています。


ワールド・ビジョンが実施する心理社会的支援プログラムに参加するマリアちゃんと児童心理学者のユリアさん
ワールド・ビジョンが実施する心理社会的支援プログラムに参加するマリアちゃんと児童心理学者のユリアさん


支援事業担当スタッフから

支援事業部 緊急人道支援課 課長 伊藤 真理(写真)
イラク駐在 プログラム・コーディネーター 古田 ちあき


「NGO職員として、また個人としても、ウクライナに関する情報に触れるたびに辛い気持ちと戦う毎日です。
ワールド・ビジョンは2023年2月までに、65万人の人々、特に女性や子どもたちに命を守る支援を届けてきました。
しかしながら、長引く戦況やこれほどの規模の危機にあって、必要な支援をすべての人々に届けることができない困難さ、そして、『平和復興がまだ見えない状況に私たちも心が折れそうになります。
それでも、多くのウクライナの人々が希望を捨てずにいる事実や、国内外で厳しい環境に適応しようと懸命に生きている子どもたちの話を聞くと、ウクライナの人々だけはなく、我々の未来のために、ともに頑張らなくてはならないという思いを新たにするのです」
伊藤スタッフ

難民支援募金にご協力ください

6月20日は「世界難民の日」です。難民・国内避難民となって故郷を追われた子どもたちや人々は、史上初めて1億人を超えました。UNHCRの年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート2022」では、2022年末時点で、紛争、迫害、暴力、人権侵害により避難を余儀なくされた人は、1億840万人を記録したことが発表されました。どもたちは学びや遊びの機会を奪われ、恐怖と隣り合わせの日々を過ごしています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、緊急支援から復興への取り組みまで"今、最も必要な支援"を子どもたちに届けます。

厳しい環境下で避難生活を強いられている子どもたちを守り、回復を支え、未来を築くために、難民支援募金にご協力ください。

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