戦闘の傷跡の中で希望を見出す子どもたち ~イラクからの報告

(2022.02.16)

イラクのモスルで戦闘が終わってから、5年が経ちました。2014~2017年にかけて続いた戦闘はモスル市内の約65%を破壊し、現在もその破壊的な影響が目に見える形で残っています。人々はいまだ避難生活を送っていたり、元の場所に戻っていたりと様々です。心理的なトラウマを抱える人も多く、特に、様々な困難を経験した子どもたちのケアは十分とは言えません。学校を含む多くの公共サービスの再開も遅れています。

このような状況の中、ワールド・ビジョン・ジャパンは、2018年からジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成金を受けて、モスル西部の子どもたちの支援を行ってきました。これまで数千人の子どもたちが学校で再び学べるよう、また、心理社会的支援を受けられるよう活動してきました。

このプロジェクトでは、現在までに、8つの学校を修繕し(さらに3つの学校を修繕中)、4,000人以上の子どもたちに地雷の危険性や衛生習慣等の啓発活動を行ってきました。また、ぜい弱な子どもを特定して適切な支援につなげたり、子どもを取り巻く課題について政府に提言するため、「子どもの保護委員会」と呼ばれるコミュニティ機関を設立しました。さらに、最も弱い立場にある子どもたちをケアするため、ケースワーカーによって子どもたちが教育を受けられない原因を探り、その解決のための支援も行っています。このケースワーカーを通じた活動は、ワールド・ビジョンが最も困難な状況にある子どもたちに必要な支援を確実に提供する上で、非常に効果的でした。

ハジェルちゃん(6歳)は、ワールド・ビジョンのケースワーカーに出会った1人です。困難な状況の中で両親と離ればなれになってしまった彼女は、学校に登録されていませんでした。ケースワーカーは、ハジェルちゃんを学校に登録し、必要な支援を受けられるよう手続きをサポートしました。「学校に通えること、支援が受けられることがとても嬉しいです」とハジェルちゃんは語ります。

ハジェルちゃんとワールド・ビジョンのスタッフ
ハジェルちゃんとワールド・ビジョンのスタッフ

ダンヤちゃん(仮名/12歳)は、大変賢い子どもでしたが、黒板の文字が見えないために成績がふるいませんでした。お母さんは、「ダンヤちゃんはすぐに手術を受けなければ、視力を失うだろう」と言われていました。それは、家族にとって最悪のニュースでした。「私たちはとても貧しい暮らしをしています。早く対処しなければならないことは分かっていましたが、ダンヤに手術を受けさせる余裕はありませんでした」とお母さんは言います。

そこでケースワーカーは、プロジェクトを通じて、彼女が手術を受けることができるよう手配し、眼鏡を提供しました。ダンヤちゃんは今、学校に戻って新しいことを始められることを楽しみにしています。「私は今、眼鏡に慣れてきています。以前は黒板が見えませんでしたが、今はちゃんと見えます」

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ワールド・ビジョンはイラクにおいて、ハジェルちゃんやダンヤちゃんのように困難な状況にある子どもたちが、紛争等によって失われた子ども時代を取り戻し、支援を通じて未来への希望を見出す手助けをしています。2019年10月~2022年9月までの3年間で、55万人の子どもたちに支援を届けることを目標に、今も活動を続けています。