2011年3月以降、12年にわたり紛争が続くシリア。「世界最大の人道危機」ともいわれるこの事態により、美しかった街は荒廃し、人々は豊かな暮らしを失いました。
マイルストーン・プロジェクトを実施するシリア北西部は、人口460万人のうち半数以上が国内避難民です。長期化する紛争から逃れ、厳しい避難生活を送るなかで厳冬期を迎えるという、すでに極限状態にあった人々の苦しみに追い打ちをかけるように、今年2月6日に地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。
ワールド・ビジョンは、地震発生直後に被災地での緊急人道支援を開始。一人でも多くの命を救うため、食料、燃料や暖房器具等の緊急援助物資を届け、子どもたちのケア等を実施しています。そして、より長期的に子どもたちを支えるために、学校修復支援事業を行います。
シリアの子どもたちの未来と希望を守り、「自分たちで美しい地を取り戻したい。だから勉強がしたい」という彼らの願いに応えるためには、教育が不可欠です。
紛争・地震の被害を受けた校舎を修復し、子どもたちが安心して学べる環境を整備します。これにより、遠距離の学校に子どもを通わせる家庭の経済的負担の軽減、周辺校の混雑状況の緩和につながることが期待されます。
プロジェクトを実施するシリア北西部は、これまで多くの衝突や空爆が繰り返されてきた地域ですが、ワールド・ビジョン・ジャパンは2020年3月の停戦合意以降、他の人道支援団体と連携、調整し、シリアでの事業実施をサポートし、支援を届けています。なお事業実施にあたっては、中立・公平な立場を貫き、地域情勢を注意深く監視しながら、スタッフ、および子どもたちの安全を最優先にしています。
昨年、初めてシリア北部でマイルストーン事業を実施しました。40名を超えるご支援者の方々から寄付をいただき、5つの学校校舎を修復することができました。その中には、紛争で破壊され、まったく機能していなかったために子どもたちが勉強できなかった学校も含まれていましたが、見違えるようにきれいに再建することができました。
しかし、12年経過した紛争は収束のめどが立っておらず、破壊され、老朽化した学校がまだまだ数多くあります。そして、今年2月に発生した大地震により、校舎の状態がさらに悪化しました。地震により人々の生存に直結する支援のニーズが一段と高まり、学校の再建まで手が回らないのが現状です。
しかし、学校の再建を先延ばしにすることは、子どもたちの未来を奪うことになります。本事業で校舎を修復することができれば、地域の子どもたちにも大きな希望をもたらすことができます。
長年の紛争や地震により、教育を受ける機会が限られている子どもたちが安心して学校に通い、学ぶ楽しさを感じることができるよう、今年もプロジェクトを実施してまいります。
皆さまがシリアの子どもたちに目を留めてくださっていることに、心より感謝申し上げます。
2023年4月12日に開催したオンラインイベント「マイルストーン・プロジェクト オンライン説明会~シリア北西部の子どもたちは今~」の動画です。当日は、プロジェクト担当の渡邉スタッフ(ヨルダン駐在)より、シリア北西部の子どもたちが置かれた過酷な状況や、プロジェクトにより実施する活動内容について詳しくご報告しました。